女性演出家の先駆け!植田景子
まずは、「ついに宝塚にも女性演出家が!」とファンが喜んだ第一人者は、植田景子先生です。
もともと宝塚のファンで、「宝塚の演出家になりたい!」と志願し、5回目の受験でついに合格を掴み取った今生の持ち主です。
植田景子先生が学生だった時代はまだまだ男女の雇用機会が平等ではなく、女性の正規雇用に関して企業が消極的だったので、5度目でようやく歌劇団も景子先生の本気を認めてくれた、ということでしょう。
景子先生はヨーロッパへ何度か留学しており、その影響か、作品の舞台は基本的にヨーロッパが多い印象です。
イメージで言うと、モネやセザンヌなどの印象派絵画のような作風です。
割とデビュー当初の作品が、起承転結がしっかりしていてロマンチックでおすすめです。
植田景子のおすすめ演出作品
- ー夢と孤独の果てにー ルードヴィヒII世/2000年(花)
- 落陽のパレルモ/2005年(花)
- 堕天使の涙/2006年(雪)
- ロミオとジュリエット’99(バウ)/1999年(花)
- アンナ・カレーニナ(バウ)/2001年(雪)・2008年(星)・2019年(月)
小池修一郎の愛弟子、小柳菜穂子
植田景子先生の活躍でようやく劇団も「女性演出家もいいぞ」と動き出し、2人目の演出家が誕生します。(正確には前年に児玉明子先生が入団、2013年に退団)
小柳先生は「鬼才」と呼ばれる売れっ子演出家、小池修一郎先生の愛弟子です。
小池先生が日本に輸入して、今やミュージカルの金字塔となった『エリザベート』の演出助手にも必ず加わり、演出技法を直々に学んでいたりします。
小柳菜穂子のおすすめ演出作品
- 天は赤い河のほとり/2018年(宙)
- SLAPSTICK(バウ)/2002年(月)
天才現る!上田久美子
「宝塚でも女性演出家が活躍する時代」という価値観がだいぶ浸透してきた頃に、彗星のごとく現れたのが上田久美子先生でした。
上田久美子先生は残念ながら2022年に宝塚を退団してしまいましたが、数年という短い期間に絶対的な存在感を見せつけました。
いまだに「ウエクミ以上の作品には出会えない」と嘆くウエクミ信者は大勢います。
…ということで、上田久美子先生のおすすめ作品はもうほぼ全部です(笑)
上田久美子のおすすめ演出作品
- 星逢一夜/2015年(雪)
- 金色(こんじき)の砂漠/2016年(花)
- 神々の土地/2017年(宙)
- BADDY(ショー作品)/2018年(月)
- f f f -フォルティッシッシモ-/2021年(雪)
- 桜嵐記/2021年(月)
- 月雲の皇子 -衣通姫伝説より-(バウ)/2013年(月)
- 翼ある人びと(ドラマシティ)/2014年(宙)
最新作が大人気!樫畑亜依子
樫畑亜依子(かしはた あいこ)先生から下の期の皆さんは、まだ大劇場デビューしていない若い先生たちとなります。
樫畑先生は現在までで、バウホールとドラマシティ作品を3作手掛けていますが、デビュー作は「鮮烈なデビュー!」という感じではなく…
樫畑先生はどうなっていくのかな…と思っていたら、最新作が大人気となりました。
樫畑亜依子のおすすめ演出作品
- 壮麗帝(ドラマシティ)/2020年(宙)
「第二の上田久美子」誕生か?指田珠子
デビュー作からいきなりトンデモナイ作風を爆発させた、天才型の指田珠子(さしだ しゅこ)先生。
お名前からしてもうご両親のセンスが光っていますね。
どんな先生もデビュー作は何年も何年も温めた渾身の作を披露するものです。
指田先生の場合は、なんと「浦島太郎」をアレンジした作品!!
誰もが知っているあのおとぎ話を、文学的で妖艶に演出してみせました。
指田珠子のおすすめ演出作品
- 龍の宮(たつのみや)物語(バウ)/2019年(星)
- 冬霞の巴里(ドラマシティ)/2022年(花)
デビュー作で演出センスを見せつけた栗田優香
近年は、お芝居の演出家はたくさん入団されていますが、ショー作家の先生が不足しているのが気になるところ。
そこで数年ぶりのショー作家デビューとなったのが、この栗田優香(くりた ゆか)先生です。
2023年、月組のショーを初めて手掛けることが発表され、どんなショーを作る先生なの?!と大注目です。
バウホールデビューとなった『夢千鳥』では、なんと主役がヒロインに暴力を振るい、それがだんだんとタンゴのリズムになっていくという驚きの手法を披露し、ファンを虜にしました。
栗田優香のおすすめ演出作品
- 夢千鳥(バウ)/2021年(宙)
- カルト・ワイン(ドラマシティ)/2022年(宙)
まだまだ控える!活躍必至の女性演出家たち
栗田先生以外にも、町田菜花先生、冒頭でお伝えした生駒怜子先生が控えていらっしゃいます。
むしろここ数年は男性演出家よりも女性演出家のほうが多く入団している印象です。
しかも、皆さんそれぞれに独自の世界観や表現方法を既にお持ちで、本当に驚くばかり。
よく考えれば、宝塚のファンは多くが女性なのですから、同じ女性が演出するほうがファンの「ときめきのツボ」を押せるはずですよね。
以前はやはり「女性はいずれ結婚して出産するために最前線を離脱するもの」と一方的に決めつけられていた時代でした。
それがようやくこの令和になって少しずつ変わってきた、ということでしょう。
舞台業界も2.5次元ミュージカルの誕生などで細分化され、演出手法も次々に新しく生み出されています。
それらを吸収した、新しい感性を持った女性演出家が、これからの宝塚をどんどん面白くしていってくれそうですよね。