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雪組全ツ「愛するには短すぎる」の魅力

宝塚歌劇についての雑記

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退団作に良作なし??

宝塚ファンの中では「退団作に良作なし」と、よく言われます。

退団作はほとんどの場合当て書きですので、先生方がトップさんへの思いを詰め込んだ結果、ストーリーが置き去りになってしまうことがよくあるためです。

そんな中、数少ない良作と言われているのが『愛するには短すぎる』です。

初演は2006年で、星組で2011年、月組で2012年に再演されていることからも、すぐれた作品であることが、おわかりいただけると思います。

ちなみに2011年の再演時、「退団公演なのに再演が早すぎる」という声が、ファンの間から上がっていたのをよく覚えています。

早すぎると言っても、5年も経っていたんですね。

5年経ってもファンの心の中では色褪せない作品だった、と言うことでしょう。

コンパクトにまとまった、わかりやすい作品

『愛するには短すぎる』は今回、2回目の全国ツアーになります。

なぜ2回も全国ツアーに採用されているのか。
それはひとえに、わかりやすいストーリーと、宝塚の魅力がギュッと詰まった作品だからでしょう。

作品の中で描かれるのは、豪華客船の上での、たった4日間の物語です。

魅力的なキャラクターたちが活躍し、それぞれが大人の選択をした上で、主人公とヒロインは船を降りたら元の自分に戻ることを約束する、悲しい恋の物語です。

主人公は豪華客船に乗る、金持ちの実業家の息子フレッドです。

複雑な生い立ちですが、まっすぐに真摯に生きてきました。

私たちにも共感できる人物で、だからこそ彼の決断が胸に迫ります。

限られた場所、限られた時間という縛りを設け、物語の風呂敷を広げすぎなかったので、宝塚初心者にもわかりやすく、感情移入しやすい作品になっていると思います。

また場面が限られているので、全国ツアーに持って行きやすいという事情もあるでしょう。

当て書きだからこその魅力

再演には反対の声も上がったと書きましたが、それはとてもしっくりくる当て書きだったからこそ、という部分も大きいと思います。

心配りが出来て誰からも好かれる、頼れる兄貴である湖月さん。

軽妙なお芝居ができて、歌唱力の高い安蘭さん。

そのお二人だからこそ、の作品でした。

社会人であり親友という設定ながら、時に中学生のようなふざけ合いを見せて大いに笑わせてくれました。
スカイステージだったでしょうか。

2人のシーンで、観劇に来ていた小学生の男の子に大笑いされたという話を、していらっしゃいました。

小学生から見ても、大人げないじゃれ合いだったようです。

二人の飾らないやり取りが、本当に素敵なんですよね。

またお2人ともインタビューなどで答えていらっしゃるので、ご存じの方も多いと思いますが。
トップスターの湖月さんは75期で、中卒で入られています。
2番手の安蘭さんは77期で、高卒です。

年齢と学年が逆転している、このお2人の微妙な関係あってこそ、湖月さんの最後の舞台に親友役として、対等な芝居で送り出すことができたのではないかな、と感じています。

トップと2番手がしっかりタッグを組んで魅せてくれるのが、この作品最大のポイントです。

また白羽さんの品のある美貌と美しい歌声が、4日間の短い恋という設定に、説得力を持たせていました。

この作品を再演する際のヒロイン役は、トップ娘役さんの中でも特に実力のある方揃いです。

白羽さんは星と雪でトップ娘役を務め、『ベルサイユのばら』のマリー・アントワネット、『エリザベート』のエリザベートの、両方を務めました。

星組再演の夢咲ねねさんは、レジェンド柚希礼音さんの相手役として、長期にトップ娘役を務めた方です。
月組全国ツアーは愛希れいかさんで、娘役でありながら主演を務めたという稀有な方です。

今回ヒロインを務められる雪白あやさんのプレッシャーは大きいと思いますが、劇団からそれだけ期待されているということでしょう。

どんな演技を見せてくださるのか、楽しみです。

音楽にも注目!

この舞台はまた客席が明るい状態で、安蘭さん演じるアンソニーの歌で始まります。

物語が始まるという期待がぐっと高まります、

またヒロインのバーバラが船でショーをしているという設定なので、楽しく華やかなナンバーがいくつもあります。
乗船時にはセーラー姿の皆さんが歌うナンバーもあり、宝塚らしい華やかさと元気を感じます。

愉快なのが「備えあればで避難訓練」という、コメディナンバー。

船長を中心とした避難訓練の際に歌われるのですが、『タイタニック』を彷彿せる設定に、組子たちの

全力のコメディが単純に笑えて、頭に残る曲です。

初演ファンに気になるのが執事役

この作品に初演で大きな役割を果たしていたのが、フレッドの執事であるブランドン・オサリバン役の美沙のえるさんでした。

星組での再演にも同役で出演され、月組で上演された際には性別が変わり、アンマリー・オサリバンとして憧花ゆりかさんが演じられました。

『愛するには短すぎる』の魅力として「役が多い」という点があります。

名前があり、役割がある役が多いので下級生まで活躍できます。

その中でも圧巻だったのが美沙さんで、コメディエンヌとしての才能をいかんなく発揮してくださいました。

残念ながら月組の全国ツアーと同時期に上演されていた、星組の『オーシャンズ11』をもって退団されたので、月組公演には出演されませんでした。

しかし美沙さんの存在があまりに大きかったので、女性役へと作り変えられたのではないかと、思うほどです。
今回の雪組ツアーではどなたが演じられるのか、男性なのか、女性なのか。
発表が待たれるところです。

もちろん初演で柚希さんが演じられ、物語の大きな発端の一つとなるバンドマネージャーのフランクが誰になるのかも、気になります。

脇に出てくるカップルたちも、主人公との対比で考えさせられることが多く、物語に深みを増しています。

初心者にこそ見て欲しい作品

全国ツアーと言えば「一生に一度の宝塚観劇」という方も、多くいらっしゃいます。

数十年前に一度だけ、全国ツアーで見た宝塚の思い出を、昨日のことのように語ってくださる方もいるほど、大切な機会です。

お知り合いで宝塚に興味がある方がいらしたら、ぜひ誘っていただきたい作品です。予備知識なしに宝塚の魅力が伝わる、良作です。

もちろん宝塚ファンにも楽しめます。

トップ推し、二番手推し、下級生推しのすべてのファンが楽しめる作品です。

その他キャストが発表されるのが楽しみですね。

最期までお付き合いいただき、ありがとうございました。