まず、単純にベルリンの壁の向こう側にいる人とは会えなくなります。
それが親友でも、両親でも、我が子でも。
例えば日本が西日本、東日本で分断されてしまったら、東日本に住んでいる人は宝塚大劇場には行けませんし、関西に住むヅカ友にはもちろん、身内にも一切会えません。
「実家のお母さんが病気で、もう死にそうなんです!」という事情のある人でも、会うことは許されません。
そして、次のポイントが東と西で命運を分けた興味深い事情になります。
西ドイツを支配したアメリカ、フランス、イギリスは民主主義国家。
東ドイツを支配したソ連は社会主義国家です。
つまり、同じドイツなのに、支配国によって国民の扱い方が全く異なってしまいました。
私たちがいま暮らしている日本は民主主義国家なので、国民の権利が保障され、国民の総意でいろいろなことが決められていきますが、社会主義国家は「すべて国のもの」です。
それぞれが持っている土地も、一生懸命働いて稼いだお給料も、みんな国のものなので、国民の権利・自由はほとんどありません。
今も社会主義を貫いている国家は僅かにありますが、やはり民主主義国家と違って国民への抑圧が強く、国の発展と平和への道のりは簡単ではありません。
一方で民主主義となった西ドイツは経済も発展し、国政も安定します。
ベルリンの壁より西に入れた人はラッキー、東に入ってしまった人はアンラッキー、そんな構図になってしまいました。
『フリューゲル』は東ドイツの軍人と西ドイツの歌手の物語
たった1枚の壁の向こう側とこちら側で、まるで生活が変わってしまった西ドイツと東ドイツ。
『フリューゲル』で月城かなと(つきしろ かなと)さん演じる軍人、ヨナス・ハインリッヒは、「抑圧」の東ドイツ所属。
海乃美月(うみの みつき)さん演じるナディア・シュナイダーは「自由」の西ドイツの歌手。
音楽やエンタメなども禁止され、「個」を消してひたすら国に仕えよ、という価値観を埋め込まれているヨナスと、自由で平和な西ドイツで奔放に生きているナディア。
価値観の全く異なるこの2人が一体どんな風に出会い、どうやって恋に落ちていくのかが『フリューゲル』の見どころのようですね。
「ベルリンの壁」と聞くとどうしても暗くつらい物語をイメージしてしまいますが、どうやら『フリューゲル』は明るい物語のようです。
ベルリンの壁があった時代を明るく描く、という新しい手法に期待が高まりますね!