『CASANOVA』東京公演、やっと観劇してきました!
「祝祭喜歌劇」の名にふさわしく、終始華やかでお祭り感のある舞台でした。
これが最後の花組大劇場公演となる鳳月杏さんの女役も話題になっていましたね.
鳳月さんの妖艶で闇を感じさせながらもどこか健気さのあるコンデュルメル夫人は圧倒的な美しさでした。
特に心惹かれたのは柚香光演じるコンデュルメル。
マント捌きがとにかくカッコいい!
劇中での明日海りお演じるカサノヴァとの戦闘シーンでのひらり、ひらりとしたマント捌きはもちろん、フィナーレでも「マントの光ちゃん最高!」というファンの心を汲んでくださったがごとく、ファサッとマントを広げて……
悪役ではありますが惚れ惚れしました。
そして横顔の美しさ!
光ちゃんは二次元と見紛うばかりの美麗なビジュアルで『はいからさんが通る』や『ポーの一族』では圧倒的な原作再現度を誇っていましたが、今回も光ちゃんのスタイリッシュな美貌が活かされたヴィランでした。
夫人とのすれ違いの関係も見どころでした。
お互い心の奥では愛していながら言葉には表せず傷つけ合うばかりの拗れてしまった間柄が切なかったです。
さて、主要キャラクターがそれぞれ魅力的で語りたい点は山ほどあるのですが、この記事では『CASANOVA』を観て「すごい!」と思った舞台芸術というポイントにフォーカスした感想をお送りします。
進化する宝塚の舞台演出
この舞台を観て思ったのが、とにかく臨場感がすごい!ということ。
異端の罪で収監された主人公・カサノヴァが脱獄を果たし、ヴェネツィア中を逃げ回るのが主なストーリーの流れなのですが、その縦横無尽に動き回るさまは舞台の狭さを忘れさせるほどでした。
ストーリーはシンプルなのですが、カサノヴァと一緒に冒険をしているような没入感があり、三時間があっという間に過ぎていきました。
なぜこんなにも臨場感があるのか?
観劇後考えていましたが、花組生の熱演はもちろんですがそれに加えて『CASANOVA』では背景映像と大道具がかなり効果的に使われていたことが大きな役割を果たしていたように思います。
ファントムの時もエリックが棲む地下水路のリアリティを増す背景映像が話題になっていましたが、この『CASANOVA』は映像の持つ力をさらに感じさせる作品でした。
舞台という限定された空間が背景映像によって補完され、三次元的な広がりを生んでいました。
テンポの良さも相まって、舞台を観ているというよりミュージカル映画を観ているような気分になりました。
背景に映し出された映像と舞台上に並ぶ大道具(セリが多用されていてかなり大掛かりでした)の相乗効果で、ヴェネツィアの街が本当に現れたかのよう。
舞台に華を添え、観客を物語の世界に入り込ませるのに一役買っています。
たとえば冒頭、カサノヴァ(明日海りお)が同室に収監されたバルビ神父(水美舞斗)と共に脱獄するシーン。
逃げ場を失った二人は塔の上へと追い詰められ、最後の逃げ道として運河に真っ逆さまに飛び降りることを選びます。
二人がセットの上から落下するのに合わせて急降下する映像が流れ、混乱する兵士たちを尻目にカサノヴァとバルビ神父はゴンドラに乗って自由へと旅立ちます。
この流れがとても鮮やかで、アトラクションに乗っているようなドキドキ感がありました!
こればかりは生の舞台で観ないと伝わらないかもしれません。
もう一つ印象的だったのが、望まぬ婚姻を強いられそうになりベアトリーチェ(仙名彩世)が家を飛び出したシーン。
ベアトリーチェはカサノヴァへの恋心と反発の間で揺れる気持ちをゴンドリエーレ(実はカサノヴァ)に向かって語ります。
船に乗る二人、揺らめく水面に背景にはヴェネツィアの街並み……一枚の絵のような美しさでした。
そのほかにも、カサノヴァがこれまでのモテモテっぷりを語るシーン
(橋の上からたくさんの女たちにカサノヴァが薔薇を振りまきます。
女性たちはもちろん観客も明日海りおにメロメロ!)や、
1幕終盤の「人生は愛の迷宮」の歌のシーン(スモークがかかった舞台にキャラクターが勢揃いする場面。
人生への向き合い方は違えど、それぞれ愛にもがいているのだなと胸を打たれました)など、一つ一つの場面が鮮やかに記憶に残っています。
視覚的に美しく展開にもスピード感があり、とても優れた演出だと感じました。
歴史とロックチューンが混在する独特の世界観
視覚的な要素だけでなく、『CASANOVA』では素晴らしい音楽も舞台の高い完成度に貢献していました。
作曲は『1789』などを手がけたドーヴ・アチア氏。
時代は18世紀、貴族や異端審問官が存在するクラシカルな設定の一方、音楽はロック調でかなりポップな印象。
型破りなカサノヴァの生き様を象徴しているような、斬新ながら聴いていて楽しくなる曲だらけです。
歌の分量も多く、その点でも満足感のある公演でした。
『群盗』観劇時も思ったことですが、現代的なアップテンポの曲に乗せて展開されると一見取っつきにくい歴史劇でも親しみやすく感じますね。
総合芸術·宝塚の底力
ご贔屓の生徒さんが舞台に出ていると「なんてカッコいいんだ……」とついつい舞台の一点を凝視してしまいがちですが、今回『CASANOVA』を観劇して、生徒さんのかっこよさを堪能するだけではなく、タカラジェンヌをさらに美しく際立たせる舞台演出の奥深さにも気づきました。
花組生が皆たいへん素敵だったので、色々な生徒さんを追ってなおかつ全体も観て、と目がいくつあっても足りないほどでしたが……笑
もしたくさん観に行けるチャンスがあれば、ご贔屓を満足に追えた後は演出に凝らされた工夫に思いを馳せてみても面白いかもしれませんね。