宝塚歌劇団では100年以上に渡って多種多様な作品所上演してきました。
過去の上演作品でお気に入りのものを見つけると「ご贔屓にこの役をやってほしい!」「今の○組にぴったりじゃない?」などと思うことはないでしょうか。
ここでは、そんな過去の上演作を演出家の先生になったつもりでキャスティング!
ああだったらいいな、こうだったらいいなと想像して楽しんでみます。
月組で『銀ちゃんの恋』
今回妄想するのは、つかこうへいさんの「蒲田行進曲」を原作とした作品、『銀ちゃんの恋』です。1996年に久世星佳さんを中心とした月組で初演され、2008年花組、2010年宙組では共に大空祐飛さん&野々すみ花さんにて再演されています。
日本の芸能界が舞台という宝塚としては大変珍しい設定で、雑然とした舞台や(いい意味で)スタイリッシュさのない衣装が印象的です。
外部のストレートプレイのような空気すら感じます。
石田先生の昭和的な世界観が抜群にマッチ!
映画に惚れ込んだ男たち格好悪いほどの真っ直ぐさと、一筋縄ではいかない恋模様を描いた異色の名作です。
芝居で魅せる月組力
「芝居の月組」の呼び名が高いように、月組といえば宝塚きっての役者集団です。
珠城さん率いる今の座組も、お芝居力は折り紙付き。
近くは『カンパニー ―努力、情熱、そして仲間たち―』『I AM FROM AUSTRIA ―故郷は甘き調べ―』といった現代を舞台にした作品も多く成功させています。
コスチュームや設定の格好良さに頼らず、心あるお芝居で観る者を揺さぶる姿は『銀ちゃんの恋』上演にぴったりでしょう!
月組トップの珠城りょうさんと昭和の親和性の高さは、『BADDY!!』で広く知られるところとなりました。
サングラスをかけると石原軍団の一員となってしまいそうな男前具合はまさに昭和の銀幕スター。
「主役は俺だ!」の声とともに現れる銀ちゃんの登場シーンも、どこかBADDYを思わせます。
銀ちゃんはタイトルロールでありながら実は登場シーンがあまり多くない銀ちゃん。
そのような立ち位置も、自分が無理に目立ちにいかず、芝居全体を包み込むように安定させる珠城さんの持ち味によくマッチすることでしょう!
つば広の女優帽に真っ赤なワンピース、サングラスをかけた小夏は、姿はまさに絵に書いたようなスター女優。
『雨に唄えば』『ON THE TOWN』と女優を夢見る娘を演じ、『I AM FROM AUSTRIA』ではハリウッドの大女優を演じた美園さくらさんが、女優を辞めて一人の女に、そして母になる女性を演じるのはとても流れがあり美しいなと思います。
風間柚乃さんのヤスが観たい!!
そしてこの作品の第二の主役と言えるのが、銀ちゃんの子分ヤス。
何を隠そうこの作品を今の月組で観たい理由の最も大きなものの一つが、「風間柚乃さんのヤスが観たい!!」なのです。
格好悪くて格好悪くて、格好悪くてもとにかく真っ直ぐな姿が格好いいヤス。
見た目の麗しいタカラジェンヌさんがこの「一周回って格好いい」に達するのは本当に難しいと思うのですが、風間さんの力強い芝居力を持ってすれば全く問題ありません(断言)。
結婚祝いのトイレのスリッパで客席降りをするナンバーも。
ブカブカの背広で町内の人に挨拶する姿も、清々しく格好悪く最高に格好良く演じて下さることでしょう!
命をかける映画バカたち!
銀ちゃんのライバル、映画スターの橘は、鳳月杏さんにお願いしたいと思います。
珠城さんのライバルを張ることができるのは鳳月さんしかいないでしょう。脚の長さ的にも!
なんだかんだ言いながら、映画に命をかける者同士として銀ちゃんと尊敬し合っている関係性もぜひ珠城さん・鳳月さんで観たいです。
そんな映画人チームからは、監督を千海華蘭さんに。
珠城さんを長いこと見つめてきた眼差しで、映画に向かい合う銀ちゃんを見つめてほしいです。
そして東洋映画の専務には紫門ゆりやさんを。
キザっていないと3分で死んでしまう? というなかなかトンチキな設定ですが、紫門さんの品の良さにかかれは多少のトンチキなど全く問題になりません。
そして秘書の晴音アキさんに、キツめの調子でたしなめていただきたく思います。
ヤスと同じく大部屋俳優で、銀ちゃんの子分なのがトメ、マコト、ジミーの3人組です。
それぞれ夢奈瑠音さん、蓮つかささん、佳城葵さんという芸達者なお3方にお願いします。
この子分たちのなんともいえない小物感とコミカルな調子が、銀ちゃんというキャラクターを表すために必要不可欠。
信頼の層の厚さでガヤガヤと芝居を盛り上げていただけることでしょう。
姿さまざまな女性たち
忘れてはならないのが銀ちゃんの新しい恋人、朋子です。
若い魅力に銀ちゃんはメロメロ。年下の彼女を「朋子さん」なんて呼んであれこれ尽くす姿は滑稽でもあり、小夏の気持ちになるとやりきれないものでもあります……。
ピチピチ、イマドキ、銀ちゃんの言葉を借りれば「若いボディ」の小夏はぜひ月の小悪魔ガール(独断と偏見)結愛かれんさんにお願いしたいと思います。
銀ちゃんが虜になあるもの納得のキュートさと、悪意なく神経を逆なでする最近の若いコ感を絶妙に表現して下さることでしょう!
対照的に落ち着いた優しさが印象的なのが、ヤスの母の存在です。
映画バカの息子に対する優しさ、小夏に対する慈しみ。小さな体をさらに小さくして小夏に頭を下げる姿は、むしろ母の愛の大きさを感じさせました。ぜひここは、この割り振りの長となる副組長の夏月都さんに母として包み込んでいただきましょう……!
こうして考えてみるとたくさんの役、そして様々な持ち味の生徒さんがいらっしゃるということがよくわかります!
皆さまもぜひ頭の中でキャスティングを楽しみながら、様々な作品・生徒さんの魅力を再発見してみてください。