宝塚歌劇団星組公演『ディミトリ 〜曙光に散る、紫の花〜』『JAGER BEAT ジャガービート』を観劇してきました。
原作「斜陽の国のルスダン」(並木陽 作)は宝塚のために書かれたのでは?と思うぐらい世界観がぴったりの作品です。
ショーに関してはいつも観劇前はお芝居の方に意識が行きがちで、メガファンタジー『JAGER BEAT ジャガービート』も楽しめたらいいなぁぐらいの期待で臨みました。が、本当に『メガ』でした。焼肉とかで、『メガ盛り』ってありますよね、私の中ではメガ盛りの『メガ』でした!
ジョージアという国へのリスペクトと二人の愛の物語
演出家の生田大和先生がジョージアンダンスを宝塚で上演したいとずっと思っていて、時を経て出会われた作品ということでした。
公演プログラムにもジョージア駐日大使のティムラズレジャバさんがコメントをお書きになっています。
私も含めジョージアという国の歴史、民族、風景を知るきっかけになりました。
舞台は13世紀、ジョージアではモンゴルやジャラルッディーン率いるホラムズに攻められ存亡の危機を迎えます。
悲しいことですが、今でも国土を侵略する、独立がおびやかされるということは世界各地で現代でも起きているので、全く過去の物語という気がしません。
首都トビリシの市場(いちば)の場面はとても活気がある様子の表現に工夫がされていました。
大道具をこういう風に使って活気を表現するのは初めてみました。
ジョージアンダンスは、礼真琴さん演じるディミトリと舞空瞳さん演じるルスダンの結婚式や戦いのシーンにも取り入れられていました。
生田先生は限られた時間でジョージアの魅力を最大限に表現されています。
ジョージアンダンス、ジョージアの民族衣装の再現は宝塚ならではだと思います。
もう一つの軸はディミトリとルスダンの愛の物語
いうまでもなくこの物語はディミトリとルスダンの愛の物語です。
ルーム・セルジュークから友好の証として(人質として)ジョージアに来ることになったディミトリと王女として生まれたルスダンの性格の違いなども冒頭でしっかり表現されています。
ルスダンの女王としての立場、王配(女王の夫)ながら異国人ということで微妙な立場のディミトリ。
普通なら結婚式は結ばれた二人にとって最も幸せな一日であるはずですが、二人はまるで嵐の中航海に出るようなけわしい表情でした。
礼真琴さんのディミトリと舞空瞳さんのルスダン女王の愛が、国の存亡の危機の中どんな風に変化していくのかが、この物語の大きな軸だと思いました。
原作を宝塚版にアレンジされている部分
ルスダンの兄のギオルギ王(綺城ひか理さん)と身分差のある妻のバテシバ(有沙瞳さん)の関係が宝塚版で大きくクローズアップされています。
後々のディミトリとルスダンの関係に大きく影響を与えるという風に描かれています。
またアヴァク・ザカリアン(暁千星さん)も原作よりも存在感のある役柄になっています。
ジョージアを憂う宰相という鋭く冷静な役を重みのある歌声で表現されていました。
極美慎さんのミヘイルがガツガツしててよかったです。
女性の観客が多いためか、女性(特にヒロイン)の役を悪く描かないのが宝塚の特徴のひとつだと思うのですが、ミヘイルがルスダンを慕うシーンもアヴァク・ザカリアンが仕組んだように描かれています。
ミヘイルはルスダンの寝室でディミトリにあっけなく刺されて死んでしまいますが、時間は短いですがルスダン女王に対する一途な思慕というか憧れが急激に膨らむ感じがとても良かったです。
JAGER BEATは、ヨーロッパからいきなり熱帯雨林に放り込まれ、躍動感の渦に!
『ディミトリ』だけでジョージアンダンス、ジョージアの歴史、ディミトリとルスダンの愛の物語と十分濃い芝居なのに、その後の『JAGER BEAT-ジャガービート』がとても濃い世界で窒息するかと思いました。
初日舞台挨拶で礼真琴さんが仰った通り、舞台の余韻がすっかり塗り替えられてしまうという本当に濃いショーでした。
これから観劇される方はちょっと心の準備というか、「くるぞ!」と思われて挑まれるのがよいかと思います。
熱量にやられます。
ずっと息を止めておなかに力を入れて観ていました。
ロックのコンサートなのか?ぐらい爆音でした。
早く激しく迫力がある音楽に負けていない、歌声とダンス。まさに体育会系の星組パッション恐るべしでした。
ライター・さんなん