宝塚歌劇団月組が公演する『応天の門/Deep Sea -海神たちのカルナバル-』は2月4日に初日を迎えます。
最近の月組と言えばチケ難公演を連発。
今回の『応天の門/Deep Sea -海神たちのカルナバル-』も一般発売日にチケットは即完売となりました。
それほど、今の月組の実力と人気は確かなものとなっています。
そんな月組の最新作をより楽しむために、『応天の門』に登場する歴史上の人物を先日紹介しました。
こちらの記事ではその後編として、藤原氏を中心にご紹介していきます!
藤原良房(光月 るう)
『応天の門』は平安時代初期です。その頃、政治は天皇とその側近たちが執り行っていました。
その側近の中でもやはり「藤原氏」は中臣鎌足を初代として、何百年も日本の政治の中心を担ってきました。
光月るう(こうづき るう)さんが演じる、この藤原良房(ふじわらのよしふさ)もまさに側近中の側近です。
政治を行うにはまだ幼い天皇の代わりに政治を行う立場を「摂政」と言いますが、良房はその摂政に就任。
実質的に国の政治の中心となります。
皇族から妻を娶ったり、自分の娘も天皇に嫁がせたり、自身に皇族の血筋が無い代わりに積極的に皇族との血縁関係を結ぶ野心家です。
それが「応天門の変」に繋がっていくのです…。
藤原基経(風間柚乃)
藤原基経(ふじわらのもとつね)は光月るうさん演じる良房の甥になりますが、のちに良房の養子に入ります。
また、天紫珠李(あまし じゅり)さん演じる藤原高子(ふじわらのたかいこ)の兄でもあります。
同期で兄妹!いいですね!
…しかし、基経と高子は実の兄妹なのに大変仲が悪かったことでも有名です(+o+)
良房から徹底的に政治家としての教育を受けて育った基経からすると、政治の邪魔をするような奔放な恋愛をしていた高子が許せなかったのかもしれません。詳しくは高子の項目で。
天皇の代が変わって清和天皇(千海華蘭)から陽成天皇になると基経は辞職を申し出ますが許されず、いわゆる引きこもりになってしまうという晩年のようです。
清和帝(千海華蘭)
ちょっと時系列が見えにくいですが、千海華蘭(ちなみ からん)さん演じる清和天皇は良房(光月るう)の孫になります。
上級生の千海さんが風間さんよりも若い役というのは…?
いやいや、千海さんなら風間さんより若い役でも難なく演じ切れそうです。
「いずれ自分の血筋から天皇を」と目論んでいた良房の願いが叶い、見事に良房の娘が天皇との間に男子を産みます。これが清和天皇です。
清和天皇の上には3人もの兄がいたのにもかかわらず9歳でほぼ無理やり即位します(^^;)
この清和天皇の摂政として良房が君臨します。
しかし清和天皇の息子の陽成天皇がまだ9歳の時に早々に清和天皇は譲位し、出家します。
あまり天皇という立場に合わない性分だったのかもしれませんね。
藤原高子(天紫珠李)
さきほどお伝えしたように、風間柚乃(かざま ゆの)さん演じる藤原基経の実の妹になります。
高子は千海華蘭さん演じる清和天皇の女御(正室のひとつ下)になります。
高子は大変な美人さんだったという言い伝えが残っており、なんといっても、鳳月 杏(ほうづき あん)さん演じる在原業平の元カノということがセンセーショナルです!
さすが業平、美人と聞けば片っ端から口説き落としにかかってますね!(笑)
伊勢物語の主人公のモデルは業平と言われていますが、その中に業平と高子をモデルにしたであろうお話も出てきます。
そこでは、2人は駆け落ちを決意します。
しかし道中で見つかってしまい、2人は引き離されてしまいます。
業平と高子は家柄が釣り合わないので、兄である基経はこの高子の無謀な振る舞いが政治に悪影響を及ぼすとして立腹して嫌っていたのかもしれませんね。
藤原常行(礼華はる)
藤原常行(ふじわらのときつら)は光月・風間親子と同じ藤原姓ではありますが、家同士はライバルになります。
常行で特筆すべきは、『応天の門』の公演解説にも出てくる「百鬼夜行」にまつわるエピソードを持っているところです。
常行は百鬼夜行の日は外出してはいけないという習わしを破り、想い人に会うために出かけてしまいます。
そしてまんまと鬼に遭遇し、さらわれそうになりますが、胸元に入れていたお札のおかげで逃げることができたそうな。
紀 長谷雄(彩海せら)
紀 長谷雄(き の はせお)は『竹取物語』の作者候補の一人にも挙がっている文学者です。
しかしその文才を認められるまでに長い苦労をした人で、菅原道真の推薦もあって次第に活躍するようになります。
菅原道真を師と仰いでいたため、謀反の嫌疑をかけられて道真が左遷させられた後は長谷雄も無念ながら失脚していきます。
応天門の変という未解決事件があった!
ここまでが主な登場人物ですが、最後に『応天の門』というタイトルにもなっている「応天門の変」について少しご紹介。
応天門の変は実際に平安時代にあった事件の名前です。
866年、宮廷内にあった正門のひとつ「応天門」が放火されるという事件が起きました。
放火というのは大罪ですので、宮廷内は大騒ぎとなり、すぐに犯人捜しが始まります。
今で言えば皇居に放火するようなものですから、それは大変なことですよね。
いろいろな人が犯人ではないかと怪しまれて検挙され、冤罪で失脚していった政治家もいました。
今のように物的証拠など残っているわけがありませんので、結局犯人は分からずじまいだったようです。
この事件で政治家としてのライバルたちを罪人に仕立て上げ、最終的にいちばん得をしたのが藤原良房でした。
今ではこの放火自体も良房の仕業なのでは?という見解もあるようです。
『応天の門』ではこの未解決事件を菅原道真と在原業平がかっこよく解決していくのでしょうか!
組長である光月るうさんをはじめ、この公演を最後に退団する生徒が発表され、その人数の多さにファンに衝撃が走りました。
素晴らしい活躍をされた皆さんに相応しい良質な作品になることを願っています!