8月19日、すでに無事幕を下ろした宝塚歌劇団の「チェゲバラ 」から
月組スター·月城かなと(95期)の怪我による休演、という残念なニュースで幕を開けた、月組公演『チェ·ゲバラ』。
専科所属のトップ·オブ·トップ、轟悠を迎えてのこの公演、この偉大なお方に次ぐお役を演じることが約束されていたようなものだった月城かなとが不在となり、
その大役を担う人となった、今記事の主役と言っても過言ではないそのタカラジェンヌは、近頃新人公演や代役公演で大奔走の風間柚乃(100期生)。
この若手スターの貫禄は言わずと知れたもの。
とはいえ、天下の轟悠様の御前で、友人役というのはいくらなんでも荷が重すぎるのではなかろうか。
そんな微かな不安とチケット、それからオペラグラスを持って、いざ劇場へ—。
やっぱりすごかった!風間柚乃(100期生)
ここ最近筆者が抱いた不安の中で、最も無駄な不安だったと言っても過言ではない。
71期生の轟悠演ずるゲバラに対して、志を共にした友人フィデル·カストロ役が100期生だなんて、もし知らなければ意識することすらないだろう馴染みぶり!
あまりに自然な存在感でその世界に溶け込んでいるため、何の気なしに物語を楽しめる。
タカラジェンヌ「風間柚乃」が演ずる「カストロ」ではなく、「カストロ」そのものが憑依したかのよう(もちろん、その浅黒い肌と口周りに蓄えたヒゲの下は麗しき若手ジェンヌなのだが、その気配をまったく感じさせない)。恐るべし、風間柚乃。
月組のニューヒロイン・天紫珠李(101期生)
一昨年末、男役から転向した娘役·天紫珠李(101期生)が、ゲバラの妻となる女性·アレイダ役を好演。
1人で戦場に乗り込んでいく度胸や紅一点で戦う強さが、その凛とした美貌と立ち姿も相まって、見事に体現されていた。
男役が演じる女役を酒の肴にできるほど大好物な筆者(笑)。
個人的には“男役から転向した娘役”にも、その独特の格好良さを兼ね備えたキュートさから、いつも注目せずにはいられない。
が、筆者個人の趣味嗜好を差し置いても、天紫珠李、間違いなくニューヒロインの名を馳せたぞ!!
静かに燃える炎・礼華はる(101期生)
1幕でお亡くなりになってしまうのがもったいないと感じるほど、そこにずっといて欲しいと願ってしまうほど、その芝居に引き込んだら決して離さない男(役)がいた。
それは、先述の天紫珠李と同期生の101期男役、礼華はる。
自身の立場、祖国、恋。その狭間で揺れる思いは、静かだが、たしかに彼の中で熱く熱く燃えていた。
制帽を目深に被り、終始ほぼ表情が確認できないにも関わらず、ひしひしと伝わる彼の胸の内。
「これはすごい役者の誕生だ!」と確信した。
そして、大劇場公演次回作『I AM FROM AUSTRIA—故郷は甘き調べ—』新人公演では、ルイス役の功績ゆえか、大抜擢!リチャード·ラッティンガー役(本役は2番手スター·月城かなと)を射止めた。
ポスター写真を見るに、ルイスとはまったく違う色味の役。新たな礼華はるが見られること間違いなし!
白い天使の羽のような娘役・きよら羽龍(104期生)
娘役のきよら羽龍(104期生)が、少年の役に挑戦!。
今年最初のバウホール公演『Anna Karenina』で、ヒロインに次ぐ大役·キティ役を研1ながら見事に演じ抜いた彼女。
歌唱力は十分で、あどけなさも同居するところが魅力的。
今公演では髪をばっさりと切り、エリセオとしてゲバラとともに戦った。
さて、この少年のラストシーンがこれまた素晴らしく、涙を誘う。
頼むから神様、この健気な少年の命を奪わないでください、と切に願いたくなった。
大人な女性の役も似合いそうなので、いろんな役に出会って、さらに素敵な娘役さんになってほしい。
次回公演も期待大!
その他の注目株
轟悠という、ゲバラのような歴史に名を連ねた男をまるで当の本人かのように生き抜くことができる役者の元で、決して引けを取らず、輝かしい功績をたしかに残した4名のタカラジェンヌ。
開幕まであと1ヶ月に迫った『I AM FROM—』では、4名全員が役を得て挑む。
また、同組同世代には新公ヒロイン経験者の結愛かれん(101期)や、新人公演で主要キャストを数多く演じてきた彩音星凪(101期)、また今公演から娘役に転向し今後の活躍が楽しみな蘭世惠翔(102期)に、今回新公初ヒロインに抜擢された白河りり(103期)など、注目株が多くいて、観る側も忙しい!
10月も、ワクワクしながら劇場に向かうこと必至である。
ライター:有田だりあ