タカラジェンヌといえば、どなたをとっても美しく光り輝くすてきな舞台人。
その中でもひときわ輝きを放つのが、各組のトップスターさんです。
70人近い組子を引き連れて真ん中に立つ姿には、まさに「トップ」の名にふさわしいオーラがあります。
そんなトップスターさんにも、初舞台や初ゼリフ初めてのソロパートがあったと考えると、なんだか感慨深いもの……。
特に、スター街道の入り口とも言えるバウホール初主演は、ジェンヌさんにとってもファンにとっても格別な思い出です。
そこで、ここでは各組トップスターさんのバウ初単独主演作品から、そのスターさんの魅力に迫っていきたいと思います!
真風涼帆初主演作品『ランスロット』
宙組トップスター真風涼帆さんの初主演作品は、2011年『ランスロット』。
初主演から堂々のタイトルロールとなりました。
ランスロットは、宝塚でもしばしば題材となるアーサー王伝説に登場する、円卓の騎士のひとり。アーサー王(天寿光希)への忠誠と信頼、王妃グィネヴィア(早乙女わかば)との恋と王を裏切ることへの葛藤、そして聖杯戦争と、絡み合う様々な復讐の思惑などなど、ドラマティックな要素盛りだくさんな作品です。
また芹香斗亜さんが、ランスロットへの復讐を心に宿した重要な役どころとして登場し、現宙組トップスター&2番手スターの星組時代の共演を楽しむこともできます。
リアルメンズと見紛うたくましさ
真風涼帆さんは、公式発表175cmという長身の持ち主。
長い手足に広い背中で、思わず「宝塚に男性がいる!?」と感じてしまうようなたくましい格好良さがあります。
宝塚あるあるではありますが、長髪のヘアスタイルでも全く女装感が出ないことに感動します。
今回は騎士の役ということで、その力強い見た目がお芝居にとてもマッチしていました。
特にポスターにも使われている銀色の甲冑姿は見事!
こんな騎士に守ってもらいたい!
アーサーという素晴らしい王の妃でありながらランスロットに心惹かれてしまう王妃の気持ちも、よく分かるというものです……。
また、長身を活かしたダイナミックな立ち回りも見応え抜群。
麻央侑希さんや芹香斗亜さんといった同じく長身の方々との戦闘シーンは迫力満点です。
スタイリッシュで背の高いジェンヌさんの多い宙組でトップスターになるにふさわしいスケールの大きさが、この頃から合ったことが感じられます。
まっすぐなお芝居
今回の作品は、伝説を下敷きにしているということもあり、全体的にファンタジー色の強い作りになっています。
そこを真風涼帆さんは派手すぎない、真面目な表現のお芝居でしっかりつくり上げていました。
星組さんらしい勢いやビジュアルからくる華やかさはありつつ、けばけばしくないお芝居をされる素晴らしいバランス感覚です。
この真面目な演技の魅力は、上級生になってからより深化し続けています。
特にコメディのセンス!『ランスロット』はオモシロ要素の強い作品ではありませんでしたが、真風涼帆さんの大真面目さでおかしみを生む力はとても大きな持ち味だと思います。
コメディって、真面目にやっている結果であればあるほど面白いんですよね。
組替え、そしてトップ就任という経験を経て見事に発揮されているコメディの力は、この頃から持っていた誠実なお芝居の延長線上にあるものなのだと感じました。
お姫様抱っこの申し子!?
格好いい立ち回りに、アーサーとの男の友情、美しい王妃との恋、そして聖杯戦争、騎士道に殉ずる最期……。
少女漫画の実写化がしばしば観られる宝塚ですが、この『ランスロット』はどちらかというと少年漫画の夢が表現された作品といえるでしょう。
しかしこの作品の作・演出は、実は演出陣きっての乙女ともいわれる生田大和先生。
もちろん少女漫画の夢も詰まっております。
その演出の最たるものが、お姫様抱っこ!
実は真風涼帆さんさんは、登場作品におけるお姫様抱っこ率がとても高いのです。
『メイちゃんの執事』、『ヴァンパイア・サクセション』、『天は赤い河のほとり』などなど、みんなこぞって真風涼帆さんにお姫様抱っこをさせます。
気を失って力が入らない状態から、「ちょっと!離してよー!」(バタバタ)までいかなる状況でもすっぽりと運んでくれる安定感には惚れ惚れしますね。
本作でも、「何をするんですか!下ろしなさい!」と言うグィネヴィアを軽々と持ち上げて騎士らしい力強さを見せてくれます。
大人の階段登る 若い魅力
若きスターの公演として、若い王と円卓の騎士たちというエネルギッシュな設定をぶつけた力強い舞台は、真風涼帆さんの様々な魅力を引き出すにぴったり。
スタイリッシュで大人な宙組トップスターとなった今の姿を思い浮かべながら、若くアツい星組時代の姿を見ると感動もまたひとしおです。
若い学年から抜擢の続いた真風涼帆さんですが、それは男らしいビジュアルや真面目なお芝居といった素晴らしい持ち味があったからこそのことだったのだとよく分かる作品でした!