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柴田侑宏先生が残した名作「うたかたの恋」のおすすめポイントを語る

初心者のための宝塚

私は宝塚歌劇団の初心者に見せる作品で何を選びますか?と質問されたらば
私は迷わずに柴田先生の作品「うたかたの恋」を選びます。

アニメの巨匠、宮崎駿作品の主題歌が作品のすべてを語る
(例えば、風立ちぬ=荒井由美 ひこうき雲)と同様に
この作品も構造としては、主題歌が作品のすべてを語っており
「♪ 儚くも 美しい つかの間の恋 うたかたの恋」
この作品テーマは、この歌詞に凝縮されています

本作品は、フランスの作家クロード・アネ(Claude Anet)の小説を柴田先生が
宝塚らしい悲恋としてまとめ上げた作品です。

私は、99年、2000年の真琴つばささん、和央ようか紅ゆずる
三度観劇しています。
それでは、柴田先生を忍んでこの名作の魅力について
ご紹介させていただきます。

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おすすめポイント①

・作品設定の巧妙さとルドルフ、マリーのコスチュームで視覚的に
楽しめる要素が満載。

ハプスブルクの皇太子と男爵令嬢との恋。この設定だけで
宝塚らしい世界観です。

また、ルドルフの軍服。マリーの男爵令嬢のドレス。
完璧な舞台設定。衣装デザインも秀逸でルドルフの軍服姿は
最高にかっこよく、男役のコスチュームとしては王道でありますが…。
実はあまり、軍服ものの作品はお目にかかれないものです。

名作おすすめポイント➁ シンプル イズ ペストなプロローグ

幕開きとともに、壮大な盛り上がりの曲の中
ルドルフとマリーの並びの絵。

そして、初セリフは、「マリー、来週の月曜日、旅に出よう」とのセリフ。

かつては、宝塚のパンフレットには、公演の脚本が記載されてあり、
コアなヅカファンは、脚本の読み込みんで「うたかたの恋」の
プロローグ再現していたファンもいたといわれています。

この作品の世界に観客一気に引き込むそんな魔力をもった
宝塚のモーツァルトと呼ばれた故寺田瀧雄先生の主題歌と
柴田先生の歌詞の相乗効果が素晴らしいです。

この哀愁に綴られた旋律は寺メロディです。

♪濡れた草の中の青い小さな花 
それはあなた、それはあなた 
それはあなた(ルドルフの歌パート)
明日に夕べに森の梢にそよぐ風 
それは あなた それはあなた 
それは あなた(マリーの歌パート)

と男役と女役と交互に歌い会う、シンプルな構成でありながら
音楽と軍服とドレスのマリー。
これぞ、宝塚というプロローグです。

名作おすすめポイント➁ 「絶妙な作品構成 

完成された伏線によるドラマ」
『プロローグの二発の銃声の謎?』

・この作品、マリーとルドルフが二人で踊るシーンが幕開けと終幕前に
同じシーンが二度、繰り返されるというこの仕掛けがあります。
そして、作品は、ルドルフとマリーが出会う6か月前へ戻り、
そして、この六か月後の舞踏会へと再び戻ってくるという構になっている。

一回目と二回目では、このシーンの受け止め方がガラっと変わります。
この計算された伏線が、物語の点と点が綺麗につながる作劇は、柴田先生の
真骨頂であり、ラストに向けてドラマの盛り上がり生んでいる。

最初に主役のルドルフとマリーが躍るシーンでは、それほど
このシーンが持つ意味、クライマックスへのブリッジとなるシーンとは
気づかない。

が…。舞台が進行することで、これから始まる
クライマックスのマイヤーリンクへと展開していく物語の意味がわかる。

また、うたかたの恋の主題歌の後、の二発の銃声の謎
勘のいい方であれば、この銃の意味を先読みして
誰か、二人がつまり、主役の二人は死ぬんだ。
もしくは、歴史でルドルフの史実を知っている方であれば
この劇の結末を理解してみることができるだろう。

一方で、事前の知識なし、初見でラストの二人の旅立ちの銃声と
気づける方は少ないのではないだろうか。
これも、劇が始まりでほぼ、5分でクライマックスの伏線を
音楽のエフェクトで表現している。

伏線その2 「死の香りに満ちたルドルフが送った指輪の意味とは?」

ルドルフがマリー指輪を送るシーンがあるのだか、
指輪に込めた死への伏線がここにも巧妙に作劇されている。
この指輪にはこう刻まれている。

「死ののちまでも愛にて結ばれん」と刻まれている。
一度目の観劇時には、「僕たちは死んでも一緒になろう」との
ルドルフからマリーへの愛を表現したとの解釈であったが、これは第一層の理解だ。

この作品、二度三度と観劇すると作者が込めた指輪に込めた第二層の解釈へと
たどり着くことができる。

第二層とは、作者、柴田先生そのものです。
「ルドルフは、生きた世界は、決してマリーと結ばれることはできないとわかっていたが、ルドルフは何も語らずに、純粋にマリーへの愛をこめて
このロマンティックな言葉を指輪の裏に刻んでいる。

うたかたの恋は、作品全体にこういった「二人の死への伏線」が込められ、
宝塚の悲恋の名作といわれるゆえんはここにある。

おすすめポイント③ 「劇中劇の妙」

・短いシーンではあるが、演劇の神「シェークスピア」
のハムレットをルドルフが演じるといった仕掛けがあり、
また、シンプルながら人生を問いかけるセリフが絶妙。

「生きるべきか死ぬべきかそれが問題だ」と有名なセリフを
劇中劇として主演男役を通して見ることができます。

おすすめポイント④ 「作品背景にある政治状況とあの方も少し登場します」

・政治背景は、ハプスブルクが傾き始めてきた政治状況。
ルドルフと父との対立があり、
父に「皇位継承は難しい」と絶望的なセリフを受け、失意の底に
沈むルドルフ。
ルドルフは、ハプスブルクの中にいながら、この国政は
このままでいいのか?と葛藤するシーンも同様に描かれています。

ハプスブルクの話となれば、当然、母であるエリザベートが
登場します。

おすすめポイント➄ 「作者が込めたホッコリシーン 鬼ごっこやかくれんぼ」

過酷な状況に追い込まれていくルドルフとマリーですが、
実は、ほっこりできるルドルフとマリーのラブラブシーンがあるのですが…。
歴代の主演コンビならではの仕掛けもあったりします。

真琴つばさと檀れいverは真琴の主演作 狼男にかけて 狼ごっこ
和央ようかと花總まりver鬼ごっこ+ ジキルとハイドごっこ
春野寿美礼と桜之彩音verは、桜乃お披露目で上演したファントムごっこ

おすすめポイント⑥ 「ラストシーンの余韻」

・これは、宝塚らしい悲恋の後で、真っ白なマイヤーリンクのセット中で
白の軍服と純白のマリーとルドルフが結ばれる。
これは、タカラヅカマジックであり、悲恋を悲恋で終わらせない。

カタルシスが秀逸。二人の愛は、マイヤーリンクの白雪の中で
純白の世界で完結して終わる。
美輪明宏氏いわく、「愛を完璧な形で完結させるためには、二人が愛し合って最高の瞬間で時を止めるためには、死という仕掛けもある」と
語っていたことがあるが、ルドルフとマリーが結婚後に
生活の中で、相手の欠点が見えてきて、愛に曇りが見える前に
完全に美しい愛の世界、つまり二人は、永遠の愛=死へと旅立ったのである。

柴田先生は、素晴らしい名作を宝塚歌劇に残していただきました。
これから「うたかたの恋」は宝塚の財産として再演され続ける
名作です。タカラヅカの初見にお勧めの名作です。

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