4月27日に時代劇専門チャンネルで放送された、『月雲の皇子』-衣通姫伝説より-をご覧になった方はいらっしゃいますでしょうか。
もしまだご覧になっていない方は
5月11日(月)22時~
月組『月雲(つきぐも)の皇子(みこ)』(’13年バウホール)
再放送がありますので、是非ご覧ください!
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Amazon Prime Videoでも見ることができます(有料)
ヒロイン衣通姫役の咲妃みゆさんのインタビューつきだったのですが、懐かしい気持ちがどっと押し寄せ、手元に映像があるにも関わらず、画面に食いついて観てしまいました。
何を隠そう、『月雲の皇子』は、バウホール公演において、個人的には一番好きな演目なのです。
生徒や演出家にとって、場数を踏むステップの要になるパウホール公演。
珠城りょう・バウ初主演、上田久美子バウ初演出作品
月組のトップスター珠城りょうさんのパウホール公演初主演と、上田久美子先生のパウホール公演初演出という、 今となっては「そりゃ良作だわ」という組み合わせでした。
けれど、2013年の舞台、 珠城さんと上田先生がホープだということは知っていても、古墳時代の、古事記の物語。
あらすじを読んだだけで難しく、ついていけるのか分からないなと思っていた作品。
しかし、チケットを手にしたことを、私は生涯感謝している。そんな、素晴らしい公演でした。
静かで美しく深く充足感に浸れる作品
はじまりは、柔らかなナレーションでした。
柔らかくて、けれど小難し気な説明は川を流れる水のように私の耳をすり抜け、「今のは大事な説明だったのかもしれないのによく分からなかった」と手に汗握りました。
古墳時代、ましてや古事記など詳しくはない私がついていけるのか。チケットを取るときの悩みが現実となりそうだったそのとき、照明の光で、私の両の目に舞台が映りこみました。
「静かで、美しい」そう、思いました。
今、テレビ画面の向こうで映像を観ても、思います。 静かで、美しい。
古墳時代だとか、古事記だとか、詳しくなくても大丈夫なことはすぐにわかりました。
知識がある人は知識をプラスしての楽しみ方が出来、知識がない人でもまったく困ることのない作品。
長い説明などなくても、誰が偉くて、誰が兄弟姉妹で、人間関係の動きが手に取るようにわかり、息をのむ物語。静かに涙を流してしまう。
そうして、最後。
よく分からなかった物語のはじまり、つまり、あの、水のように流れてしまったナレーションの意味が分かるしくみになっているのです。
こんなに美しい物語があるのだと、わたしはひとつの作品を観たのだと、深い充足感に満ち足りました。
歴史と、権力と、恋と、兄弟。愛と、血族と、領地と、憎しみ。ロマンチックで、コミカルで、シリアスで、カタルシス。
歌とお芝居とダンスと説明。すべてのバランスが絶妙で、ひとつの物語の良さを痛感できる作品。「こんな作品、他にある!?」と終わった瞬間叫びだしたくなりました。
素晴らしい配役
物語もさることながら、配役が良いのです。
本当に、良い。珠城りょうさん演じる木梨軽皇子の清廉潔白な雰囲気と、兄弟なのに血生臭さを理解している鳳月杏さん演じる穴穂皇子。
この対比が素晴らしかったですね。
木梨軽皇子は、清廉潔白のままではいられなくなるのですが、その変貌も、穴穂皇子とは似ても似つかない。けれど、兄弟だと痛感できる二人。
二人が行き違うように歌う場面、大好きです。
そして、衣通姫を演じた咲妃みゆさん。物語の事情で、前半はほとんど声を聴くことが出来ないのですが、それでも伝わる、不思議な感覚。
あんなに激しくて、葛藤がたくさんある場面が多いのに、衣通姫の存在により、静かに美しい作品に仕上がっているのですが、「素敵すぎて言葉が出ない」そういう気持ちにめぐり合える上質な作品です。
今では月組を担う生徒さんたち(千海さん、白雪さん、晴音さん、輝月さん、蓮さん、佳城さんなど)下級生の多くで構成された物語だったのですが、当時から芸達者な皆さん。
それを意味する台詞がないにも関わらず、どうしてそう動くのか分かってしまう。
本当に、「チケットを手にして良かった。映像に残ってよかった」と、感無量になれる作品です。
時代劇専門チャンネルでは、5/11(月)にもう一度『月雲の皇子』を放送してくださいます。
華麗なる宝塚の世界 SEASON2 と題して、毎週月曜日、たくさんの作品を取り上げてくださっているので、良かったらぜひ、ご覧ください。
家にいる時間が長くなった方は多くいらっしゃると思うので、過去の、大劇場ではない作品(つまりは意外にも観たことのない作品)などとめぐり合い、 皆様が楽しめたらと思います。どうぞ、皆様がご健康でありますように!
●5月11日(月)22時~ CS時代劇専門チャンネルにて
月組『月雲(つきぐも)の皇子(みこ)』(’13年バウホール)