宝塚歌劇団宙組のバウホール公演『リッツ·ホテルくらいに大きなダイヤモンド』が9月16日に千秋楽を迎えた。
『リッツ·ホテルくらいに大きなダイヤモンド』…って、どんなタイトルやねん!と、初めて聞いたときはお恥ずかしながらそう思ってしまった筆者です(笑)。
かの有名な、アメリカの小説家 F·スコット·フィッツジェラルドさんの短編小説なのだとか!
大変失礼いたしました(笑)
新進気鋭の宙組男役·瑠風輝さん(98期)&娘役·夢白あやさん(103期)コンビでご披露いただいたこの作品。
ポスターを見れば、リッツ·ホテルやダイヤモンドというより「断崖絶壁」を背になぜか陽気に踊るお二人の姿。いや、とっても素敵なんですよ。
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2人とも、小顔で美形、細くて長い手足も、その髪色だって、まさに「THE タカラジェンヌ!!」
でもなんだか、軽やかなステップで宇宙の果てまで踊り去ってしまいそうだなと(笑)
それと同じくらい、私の心も軽やかに、バウホールへと向かいました。
バウホール初主演の瑠風輝(98期生)
本作は、フィッツジェラルド作品としては異色の、「完全なるフィクション」。
“お屋敷が丸ごとひと続きのダイヤモンドで出来ている”なんて、そりゃあフィクションですよね(笑)
実際にあったら、住み心地が悪いなんてもんじゃない(笑)
それに、どう考えても大きすぎる!
部屋から客間まで十数キロって…巨大すべり台で移動するとはいえ、シャレにならない距離!
さて、出演者はまず、バウ初主演の瑠風輝がジョン·T·アンガー役を爽やかに熱演。
「謎のお屋敷」に振り回される姿がチャーミングで面白い。
新人公演での主演経験もあり、堂々魅せたが、この残暑も相まってキラキラとほとばしる汗に、内心はきっと緊張もあるんだろうなぁ~と、なぜか親心に似た気持ちで見守る筆者(笑)
そんな筆者が観劇した日のカーテンコールでは、少し噛んでしまって自らの頰に喝を入れる場面があったが、それもご愛嬌。
見事な初主演でした!
バウホール初ヒロインの夢白あや(103期生)
同じくバウ初ヒロインの夢白あやは103期生。(→103期生一覧)
他組を併せても、現時点でバウヒロイン経験者の最下級生ということになる。
とはいえ、すでにヒロインオーラを存分に纏った娘役さんという印象。
特大ダイヤモンドという温室で育った無邪気なキスミンを好演した。
早くから注目を集め、大人びた美貌も相まってか『神々の土地』新人公演の大公妃イリナや『オーシャンズ11』新人公演のテスなど大人の女性を演じることの多かった彼女。
しかし、キスミンのような純真無垢な感じも可愛らしい。
鷹翔千空(101期生)
ジョンの友人でキスミンの兄·パーシーには鷹翔千空。
今や超がつくほど新進気鋭の男役スターとして名乗りをあげている彼女だが、やはりそれにふさわしい華やかさやイケメンぶりがまず確実に目を惹く。
瑠風輝演じるジョンに憧れを抱く青年で、もはや恋なんじゃないかと思えるほどのジョン愛が憎めない。
家族愛なども覗かせながら、複雑な役どころを丁寧に演じていた。
このダイヤモンドのお屋敷の人々は、パーシーとキスミンの兄妹以上にキャラクターが濃い!
少々(いや、かなり!?)時代錯誤感のあるファッションに身を包み、非常に陽気(笑)特に兄妹の両親を演じる悠真倫と美風舞良が、この若いカンパニーを絶妙な加減で支えつつ、期待を裏切らないスパイスとなっていた。
そして、筆者は個人的に、宙組92期生は天才職人肌の役者だと常々思っているのだが、やはり今回も92期生の松風輝が、主にジョンの世話係を担当する召使い3人組、トム·ジム·サムの長を安定感抜群に演じてくれているのが良い。
真名瀬みら(101期生)
25人という少数精鋭。
アンサンブル勢では、端にいたって目を惹く華がある101期生の真名瀬みらが好印象。
瑠風輝や鷹翔千空に引けを取らないスタイルもさることながら、男役のお芝居を真摯に学び、ひたむきに演じる姿が好感を与える。
また、明るい笑顔やキレのあるダンスも魅力的!これからが楽しみな1人である。
瑠風·夢白コンビ
フィナーレも抜かりなく素晴らしい。
「軽やかなステップで宇宙の果てまで踊り去ってしまいそう」なんて、我ながら、ふざけているのかと言われても仕方ないほどくだらない第一印象を抱いてすみません(笑)
だがしかし、そんな筆者の抱いた印象が、あながち間違いではないと思えるほど軽やかな、瑠風·夢白コンビのデュエットダンスが最高!
リフトなんて、夢白あやは白い羽か!?と溜息が出るほど軽くて美しい。
なかなか息の合った素敵なコンビだ。
不思議な世界観の物語ではあったが、エネルギッシュな楽しい作品だった。
著者:有田だりあ